人工的に肉を作るビジネス
更新日:
人工肉・人造肉製造で、欧米企業が激しい開発競争を繰り広げている。
人工肉・人造肉とは、人間が作る肉類のことで、大きく二つの系統に分かれる。
まず一つは、植物由来の材料によって、肉のような味と食感を持った「肉代用品」つまり「代替肉」。
代替肉は肉そのものの形ではなく、ハンバーガーのビーフパティやソーセージのような、肉加工品に似せた形で提供される。
代替肉は、肉料理は食べたいが、健康上や理念上の考えから食べられない人向けの製品だ。
もう一つは、動物の細胞を培養して、肉そのものを工場で作る「培養肉」。
牛を育てるには、広い牧場や大量の飼料が必要だが、工場で肉の部分だけ作ろうというのが培養肉の考え方だ。
培養肉は、宇宙ステーションや他の惑星で、人類が日常生活を行うことも想定して開発されている。
もちろん、どちらの人造肉も、地球の食糧危機や環境破壊への対策という理念も掲げられているが。
代用肉 植物由来の「肉そっくりの食べ物」
菜食主義者は、肉や魚など、動物を殺さないと食べられないモノは食べない。
牛乳や卵は食べるという人もいるし、それも食べないという人もいる。
佛教で言う「不殺生」(ふせっしょう)なのか、動物愛護と言うことなのか、考え方は人によって様々だろう。
ところがなぜか「肉料理」は止められないようで、肉の代替品は昔から様々なモノが考案されてきた。
大豆を使った大豆ミートは、昔から代用肉として製造販売されているし、最近もまた2本では「ゼロミート」と呼ばれる商品も売り出されて人気だという。
この代用肉の分野で注目を集めているのが、アメリカのビヨンド・ミート社だ。
ビヨンド・バーガー マクドナルドでも試験販売
ビヨンド・ミート社は、アメリカ・ロサンゼルスの代替肉メーカーだ。
このビヨンド・ミートには、ビル・ゲイツや三井物産などが出資しており、本格的な代用肉製造販売を行っている。
ビヨンド・ミートの特徴は、メインターゲットにハンバーガー用パティを選び、可能な限り従来の牛肉に味や風味を近づけたことにある。
いままで植物由来の人工肉が、なかなか広まらなかった背景には、既存の肉料理と比べた場合、食感や香りなどが劣っていたことがあった。
創業者のイーサン・ブラウンは、その点を改善して、既存のパティの食感や香り、風味に近づける事に成功した。
ビヨンド・ミートの主原料はエンドウ豆で、エンドウ豆からタンパク質を抽出して、それをハンバーガー用のパティ(ビヨンド・バーガー)に加工して提供している。
エンドウ豆は、100グラム中に21.7グラムもタンパク質を含む鶏肉並みの高タンパク食品で、しかも秋冬に植えて春に収穫できる作物だ。
材料としてエンドウ豆を選んだ理由は、アメリカでは大豆アレルギーを持つ人が多いかららしい。
これが「ハンバーガーは食べたいが、健康上や環境問題などの理由から食べられない人々」に受けて、ビヨンド・バーガーは業績を伸ばした。
すでに株式も上場し、決算も黒字化しており、ヨーロッパでも製造販売に着手している。
さらにアメリカのマクドナルドがテスト販売を開始した「P.L.Tバーガー」(植物・レタス・トマトによる代替肉ハンバーガー)のパティにも採用され、さらに業績を伸ばすものと考えられている。
ビヨンド・ミートの製品は、すでに台湾や香港でも販売されており、中国大陸への進出も目指しているという。
ただし、2020年初頭時点では、ビヨンドミートの生産能力では、アメリカのマクドナルド全店舗に供給することは難しいことがわかり、関連銘柄の株価が下がっている。
インポッシブル・ミート アニマルフリー代用肉
マクドナルドに植物由来のパティを提供するのがビヨンド・ミートなら、バーガーキングに代用肉を提供しているのが、インポッシブル・ミート社だ。
インポッシブル・ミート社は、バーガーキングのアニマルフリー・バーガーのインポッシブル・ワッパー用のパティを製造している。
同社は、アメリカ・スタンフォード大学の生化学教授のパトリック・ブラウンが興した企業だ。
彼は、食肉生産のために広大な土地と大量の飼料が用いられ、それによる環境破壊を憂慮した。
そのため、アニマルフリーで、環境負荷の小さな代用肉の開発を決意したのだという。
インポッシブル・ミートでは、主原料に大豆タンパクを利用している。
他には、パーフェクト・デー社が、砂糖を発酵させて作った乳清タンパクとカゼインから作ったアイスクリームを販売して話題になった。
こちらもアニマルフリーで牛乳や卵の代替製品を作ることを志している。
それによって牛乳生産に必要なエネルギーの半分と、牧草地の98%を節約できるという。
代用肉は、単なる菜食主義者やダイエッターのためのモノだけではなく、畜産による地球環境破壊対策としても、注目されているわけだね。
代替肉 関連銘柄
不二製油(2607)
大豆ミートの国内シェアトップ
千葉県に新工場建設中で製造大
大塚食品
ゼロミートを展開。お肉じゃないのにそこそこ美味い。
日本ハム 2282
NatuMeat(ナチュミート)というブランドで、植物性由来のハム・ソーセージ・ハンバーグを、2020年より販売開始。
丸大食品 2288
「大豆ライフ」という商品名で、従来のラインナップに代用肉製品を追加。
伊藤ハム米久ホールディングス 2296
2020年2月より、販売開始。セブンイレブンで試験販売も。「米久のノンミート」
亀田製菓 2220
大豆で作ったビーフジャーキーや、さきイカを販売。