次世代炭素素材 カーボンナノチューブとは
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カーボン・ナノ・チューブも、話題になるテーマだ。
カーボンナノチューブは、炭素原子だけで出来た管状の素材で、次世代炭素素材と呼ばれている。
炭素原子が六角形に連なってシート状になったものを、グラフェンシートと呼ぶのだが、それが丸くなってチューブ状になった構造をしている。
カーボンナノチューブの両端は、C60(フラーレン)というサッカーボール構造になっている。
また、チューブは何層にも層を重ねることができる(マルチウオールチューブ)。
このカーボンナノチューブの特徴は、極細でも強く、電気を良く通し、熱伝導性にも優れているところにある。
カーボンナノチューブは、銅線の1000倍の電流を流せる素材
電気を通す素材としては、銅線がおなじみだが、銅線は細くすればするほど弱くなり、断線しやすくなる。
また銅線は、細くすればするほど流せる電流量も少なくなるため、一定の太さがないと電流を流せない。
そのため電子部品も、ある一定の小ささまでしか、小さく出来ない。
まとめると、銅線は「細くすると、電子部品には使えない素材」で、これが電子部品のボトルネックになっていたわけだ。
ところが多層カーボンナノチューブは、10億分の1メートルという、恐ろしいほど細いチューブなのにも関わらず、ダイヤモンド並みの強さ(引っ張り剛性)を持つ。
そしてさらに、同じ太さの銅線の1,000倍もの電流を流すことが出来る。
逆に言うと、従来の銅線をカーボンナノチューブに置き換えると、千分の一の細さにすることが出来るわけだ。
銅線は、細くすればするほど電子が通りにくくなり、大量の電流を流すと銅原子に電子がぶつかって発熱するため、断線しやすくなる。
ところがカーボンナノチューブは、ぶつかる銅原子がないため、銅線の千倍の電流でも流すことが出来る。
しかも熱伝導性も銅の10倍あって熱が溜まらないため、断線する可能性が低い。
カーボンナノチューブの利用法の色々
意外に思うかも知れないが、実は半導体チップは、物凄い熱を発生する。
現在の半導体チップは、半導体と基板を細い金属性ワイヤーでつないでいるため、電気抵抗による発熱が凄い。
数ミリ角の半導体チップ一個で、なんと電球2個分の熱が発生すると言うから、この熱をどんどん逃がさないと性能を上げられない。
しかし金属製のワイヤーを使う限り、素材を何にしても発熱量は大して変わらない。
金属原子に電子がぶち当たって発熱するわけだから。
ところがこの金属製ワイヤーをやめて、多層カーボンナノチューブを使う構造にすると、逃がせる熱量を60%増やせるため、従来の半導体チップの能力を6割方上げることが可能になる。
カーボンナノチューブの欠点
カーボンナノチューブは、銅線に替わる炭素素材だが、残念ながら欠点がある。
その一つは、アスベスト並みの発がん性があると言うことだ。
カーボンナノチューブは、吸い込むと発がんリスクがあると言うことだ。
そのため、あまり生活環境に使える素材ではない。
カーボンナノチューブ 関連銘柄
- GSIクレイオス 8101 … ナノテクノロジー事業にて、カーボンナノの応用開発
- 日本ゼオン 4205 … スーパーグロース・カーボンナノチューブの量産工場を世界に先駆けて完成。
- 昭電工 4004 … リチウムイオン電池用のカーボンナノチューブの生産
- クラレ 3405 … カーボンナノチューブ応用導電繊維の開発
- 古河電 5801 … 世界トップクラスの導電率カーボンナノチューブ導体を開発
- 東レ 3402 … 炭素繊維シェア世界トップ
- 宇部興産 4208 … リチウムイオン電池材料用の多層カーボンナノチューブを事業化
- アルバック 6728 … 世界で初めてカーボンナノチューブ成長装置を開発。高純度量生産可能。
- 東海カーボン 5301 … ファインセラミックス、カーボンナノチューブ凝集体の用途開発